ダイバーシティということを、勘違いしている方が多いように思うので、私は、「多様な視点が集まることで良い成果を出す」が「ダイバーシティ経営」の目的です、と講演やコンサルテーションなどでお伝えしてきています。

CEOや人事部は、組織に多様な人を集めてダイバーシティ経営を推進する仕組みを作るなどの仕事がありますが、なんといっても重要なのは、その構成員である一人ひとりのマインドや言動です。

各自が高める必要ある技術の1つとして、私は30年以上前から、「I statement(アイ・ステートメント)」という発言方法を提唱してきました。ダイバーシティ経営を実現するための「対話の技術」であり、「成果を生み出す各自のコミュニケーション技術」です。

ダイバーシティ経営とは、違いを持った一人ひとりが、自分の知恵や経験を持ち寄り、それを組み合わせて、一人では到達できない成果を生み出すことです。私はこれを「三人寄れば文殊の知恵」と表現しています。

しかし特に日本語では、「私」という単語を発音しないこともありますし、自己主張と間違えられる恐れを感じる人もいて、あえて、意識してトレーニングすることが重要です。

「皆もそう思っていると思いますが・・・」
「一般的には・・・」
「最近は、多くの人が・・・・・_
「男性は大抵・・・・」
「こどものいる女性は・・・・」
「・・・・と思う人も多くいると思いますが・・・」

などと発言することが多いかと思います。
しかしこんなふうに主語を曖昧にするのではなくは、一人ひとりの体験や視点に価値があるので、

「私はこう考えます」
「私はこんな経験をしました」
「私なら、このように対応します」

と、まず、自分一人の体験や考えに限定して、会話のテーブルに載せることに意味があります。「多様な視点」を集める健全な組織の始まりです。

もちろんこれは「私」が正しいと主張し続けることではありません。言い放って終わりでもありません。世界中で自分だけしか持っていない経験には価値がある、だからこそ、その視点を皆に伝え、議論のための選択肢の1つとして加えるのです。

誰かと同じ意見である必要もありませんし、多数派である必要もありません。「皆で良い結果を生み出す」という大目的に協力するために、各自から提示された一つひとつの視点が組み合わさることで、新しいアイデアやより良い解決策が生まれるのです。これが「ダイバーシティ経営」の始まりなのです。

会議のファシリテータも、「あなたはどう考えますか」と問いかけ、年齢、役職、性別、国籍などに関係なく、一人ひとりの視点・意見を同じ価値として議論のテーブルに乗せていきましょう。

I statementは、自分で自分の思考を鍛える訓練であり、自尊心を育てる訓練であり、リーダーシップを育てる訓練でもあります。毎日筋力トレーニングを続けるように、毎日、I statementで考え、話す。

ダイバーシティ経営とは、一人ひとりの違いを成果につなげる経営だと私は考えています。I statementは、チームの知恵を最大化する技術、ダイバーシティ経営の基盤です。