2011年10月29日

倫理とコンプライアンス

 先日、中国での映像が流れ、話題になりました。2歳の女の子が車にひかれて道に倒れているのに、18人が助けずに脇を歩き去ったという衝撃映像です。これを……▼
見た中国の街中のインタビューでも「これはひどい」と言う人と、「自分もそうしたと思う。親から、他人のことにかかわるなと教えられている」という人と両方いました。
 「中国の人は、まだ民度が低い」などと批評した声もでてきましたが、18人の通り過ぎた人たちは、何かの違反をしたわけではありません。私たちはここで何を思い起こさなくてはいけないのでしょうか。
 私の仕事の一つに、企業倫理についてコンサルティングがあります。企業のビジョン、倫理基準、ミッションなどを整理したり、明確にしたり、社員の「腹に落とす」ということが仕事の一つです。そこでいつも最初に明確にすることが倫理とコンプライアンスの違いです。
 最近多くの企業がコンプライアンス室を作り、企業が正しく経営されることを重視していますが、コンプライアンスとは法令順守という意味。つまり、法律をしっかり守ろう、というための体制です。
 しかし私は、コンプライアンス室ではなく、その上位概念であるエシックス室を作ろうと提案します。エシックス(倫理)という概念が大切だからです。
 「法律を犯していないから、いいだろう」というのが、18人の通り過ぎた人たちの行為です。確かに、法律違反ではなく、罰せられることはないかもしれない。しかし、その行為を知った世界中の多くの人が「それは、ひどいじゃないか」と感じる。これを企業に置き換えると、ある出来事や、ある行為に対して、消費者や株主、メディアが「それは変じゃないか」と感じるのに、社内の人たちが「でも、法令は守っている」と言っているという構図です。
 法令を守っていればよいということではない。何が正しいのかをしっかり考える。多様な視点から見て、一番正しいと思うことをする。し続ける。これが、エシックス(倫理)ということになります。
 亡くなってしまった2歳の女の子の事を考えると心がとても痛みます。ご冥福をお祈りし、せめて私たちは彼女の死を無駄にせずに、学び、改善したいと思います。つまり法令を守ることにとどまらず、自分自身の倫理観を高めること。そして組織での倫理観を高めることを務めたいと思います。企業においても、コンプライアンスにとどまらず、エシックスに対する取り組みが広がることを期待したいと思います。






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この記事へのコメント

今御ブログを拝見して初めて存知上げました。

言葉を失いました。

お亡くなりになったのですね。

悔しいですね!

ただ私は現在34歳なのですが、22歳の時に、交通量の多い富山県の交差点にてバイクに乗っていておもいっきり転倒したのですが誰一人声をかけてくれる方はいませんでした。




Posted by Dream at 2011年10月31日 22:17